やり直せない辺鄙な人生
突然だが私の初めてされた告白について話そうと思う。
高校一年生。相手は出席番号前後の女の子A。
初日から姫カットツインテールのブッ飛ばしで学生証の写真を撮る時に担任に「お前どこ目指してんの?」と言われていた。私もそう思った。
私は工業高校デザイン科だったので、“科”の先生達は専門知識を揃えた限定的な教師が実技を教える、そして生徒と先生、先生と先生同士がみな仲が良かったのでフランクだった。
その実技担当の教師が一年時担任だったのでこんなやべえ失礼な普通科だったら訴えられるような事をサクサクと言ってのけるのは日常だった。さくさくパンダ食った事ない。
まあ一年経ったぐらいかな。いつメンもきちんと固定化されてきて、私はこんな性格。
いつだって“疎外感”を感じていた。
周りからしたら私という人間は主要人物だったらしいが、生憎私はそうとは一ミリ足りとも数グラム足りとも思えなかった。
そんな中行われた席替え。
その時テスト明けだったので席は番号順。
異様にAちゃんは席を替える事を嫌がる。
「私ちゃんの前だったらいいよ!」
ずっとその一点張り。
正直私としては一年経ってもまだ“人気者”やましてや“認知してもらえてる人”になれている感覚さえ一切無いため、「どうしてこの子は私の事を見てくれてるんだろう」と、そう思った。
私は私自身を見てもらえた事が無かったため、怖いという感情にまみれた。
本当にとにかく、言い知れない恐怖を抱いた。
「私なんかが見てもらえるはずない、そんな世界はこの世に存在しない」ってね。そんな具合にね。今でも思ってるよ。
そしてその席替えから3ヶ月後ぐらい。
私達は二年生になった。
普通科ではないためクラス替えは三年間無い。
そして私は家庭環境の良し悪しを気にし始めた。
気づいてしまった。
「私の家って、おかしいんだ」って。
そして中学の頃に発症した抑うつ状態が再発。
朝体が動かず起きられない。
それに加えてただでさえ要領の悪い私が家族全員分の家事を行い手一杯。
学校を休む事が増えたし、家事で遅刻も多々した。
学校から親父や母親に連絡がいったぐらいだ。
そんな日々が二年生になって続いていた。
この話ではお久しぶりだが主役のAちゃんから頻繁に通話が来ていた。
朝遅刻したら私が電車に乗っている間に電話をかけてきては、私は出るだけ出てAちゃんが一方的に「私ちゃん今電車だ。しゃべりなよ」とちょっと可愛く言ってくる。降りたら「ごめんごめん笑」の会話が常だった。
いつメンと歩いてる時。いつも隣にはAちゃんがいた。
私はそっと心のどこかで
「この子が私だけのものになればいいのに」
そう思った事が一度だけあった事を今でも鮮明に、ずっと覚えている。
その時「だめだ、この感情は多分、恋愛じゃない。ただの独占欲だ」とそう自戒しながら。
でも、手とか繋いだり、肩並べたりとかしたいなあと思った記憶もある。
自戒と理想空想を頭の中に交互に浮かべながら。
そしてそんな遅刻魔休み魔を極めかけた5月終わり頃。
「Aちゃんが最近恋で悩んでいる」
そういう噂がいつメン内で流れていた。
そうかあ…あの子がこのクラスのダンシィに…よほどいい男なんだろうなと、まあ私から見たらこのクラスの男子なんて絵に描いたようなオタクしかいなかったために誰も魅力的ではなかったため、要領の良い出来の良いAちゃんを惚れさせたんだ、よほど男前感をAちゃんに不意に見せたにちげえねえ。そう思っていて、ちょっと悔しいなとも思った。
そしていつも通り私が学校を休んで通話をしている時。
Aちゃんの好きな人の話になった。
何でかは覚えてないけど、なった。
そして私がえー誰誰ー?!と次々に名前を挙げていってというお決まりの流れになっていた。
内心私はくぅー!惚れられた男が羨ましいぜ!という多分別に恋愛感情ではないよくある人間に対する嫉妬心、みたいなやつがあった。
まあ、誰かの才能に嫉妬するみたいな。そういう人間的な嫉妬。男女とか関係無いやつ。
じゃあ何文字かだけ!とか苗字は何文字?!とか、そういうキャッキャして楽しむアレになっていた。
まあ、相手は本気で悩んでいたらしいのでキャッキャはしてなかった。私だけだったらしい。
すると突然「えー…言っちゃおうかなあ」「言っちゃっても良いのかなあ…」とごにょごにょしだしたので「あ、これ本気だ」と思った。
こんなに毎日話している子が告白を受け入れてもらえた時、私はどこにいるんだろう。
そんな不安が過ぎった。
とは言いつつも、私も「言っちゃいなよー」などとちょっと茶化しながら言った。
こんなに短い文にまとまってるけどこの通話、ここまでで2時間やってます。
そしてまあそんなに間髪いれずに
「私ちゃん」
最初、本当にマジで名前を呼ばれただけかと思ったので、「え、なになにだれだれ?」と返事をした。
「だから」とか接続語も何も言わずにもう一度「私ちゃん」と言ってきたので、
「…?え?」
としか言えなかったのを覚えている。
彼女は声優養成所の審査を通り後は通うだけの状況だったが親に止められ泣く泣く断念した可愛らしいアニメ声でか細く、私の名前を二度言った。
言われた後「何文字だったっけ」「あ、私の名前文字数合ってる」「え、でも、女である事は視野に入れてはいたけどあの子じゃないの」「ん???いや、マジで名前呼ばれただけだったら?自惚れちゃダメ」
ばっかり秒単位で考えてた。
一番は「マジで呼ばれただけ説」を必死に考えてた。
そしてそれを考えてる間、さらに2時間経ってた。二人とも無言だった。
なんなら考えてるなんて言ったけど途中で思考放棄してネットサーフィンしてた。ネサフネサフゥ〜↑↑
そして親が帰ってきたので私は話を切り出した。
「…マジで?」
「…マジ」
「えーっとね、うーんとね、わたしもね、Aちゃんの一番になれないかなーとは、思ってたよ」
「…え、それって、OKってこと?」
「なのかな…?」
ひっじょーに曖昧に終わらせた。
そして切り出された話。
「でも私ちゃんってZのこと好きなんじゃないの?」
おいおいすげえな。
説明しよう。
Zとは、メンタルヘルス仲間で一年後半から私といるようになり私の抱き心地が良いらしくずっと抱きついてくる女子のことであーる。r。
びっくりした。
BL漫画で幼馴染みが最近他の男のクラスメイトと仲良くしていて告白する時に「でもお前アイツの事好きなんじゃねえのかよ…!」って言うアレだ、同性を好きになる事は今はまだ滅多に無いマイノリティである事を忘れているアレだ、BL漫画で学んだテストに出るやつだ、になった。わざわざ人生という課程で腐女子を履修登録して得た知識だった。
「いや、Zはただの話の合う友達だよ〜」
即答できました。
「そうなんだ…それならいいけど」
それ以外ねえよ。
なーんて思いながら。
私はここから醜態ばかりを晒していく事になるのでした。
お付き合い?を始めてから一年間。
Aちゃんはたくさん私と一緒にいようとしてくれました。
でも、彼女も彼女の家庭は大変で、親子喧嘩なんて可愛らしいものではなく互いが互いを憎み合う母子の家庭。
中学時代は親友の家に毎晩泊まっていたそうな。
私も私で中学時代から崩壊し始めた家庭が高二で更に崩れていき、精神的、人格的に狂い始めました。
少し話は逸れますが、ここからの話でのキーになってくるお話。
私は中学時代家庭環境の悪い子に寄り添って寄り添って寄り添い続けました。
朝五時にお宅訪問して話を聞きに行ったり、わざわざ帰り道も変えてその子の帰宅を見届けたり。
みなさん、メサイアコンプレックスとは、ご存知でしょうか?
よくTwitterでは「メサコンは引っ込んでろ」なんて言われています。
いいですか、本物のメサイアコンプレックスは、Twitterクソリプほど、生易しいものじゃないです。
酷ければ他人の人生を狂わせます。
私も加害者の、一人です。
メサイアコンプレックスとは、他人に優しくする事で自分が肯定されている感覚になれる人間のことを言います。
言葉だけでは簡単です。
でもこの心理の裏には嫉妬や自己否定、恐怖心、空虚…様々あります。
私の場合は、ACのケアテイカー、プラケーターの部類に入ります。
要するに、「親(まあその人の中で優位的な人物)に寄り添ってきた人間」がなりやすいものです。
メサイアコンプレックスの人間はみな
「寄り添わないと自分じゃない」
わけです。
中学時代、「世界を救えるのは私だけ」「安倍の顔見ると人間が汚く感じる」「世界を救うために人間を皆殺しすればいい」「動物だけの世界になればきっと世界は美しく、救われる」「私がやってあげるからね、みんな!」
などとトチ狂った事ばかりを考えていました。
そして、寄り添って“あげた”人間はみな時間を無駄にしたと後悔をしてもいいほどに、私に狂わされていました。
Aちゃんも、その一人でした。
弱い弱いAちゃん。いつも強気なのに初めて本音や弱音を見せてくれました。寄り添ってあげられるのは、心の底から心配してあげられるのは、私しかいない。
泣きました。私が泣いたらAちゃんも泣いちゃいました。
ふと顔を上げると正面の鏡に自分の顔が映りました。
全然悲しそうじゃないのです。
鏡を見るとスッと冷めた表情に変わるんです。
わんわん泣いているAちゃんの背中を真顔でさすっている自分が見えました。
素直に、「誰なんだろう」と思いました。
Aちゃんとの関係は、ここから崩れていきます。
もちろんこんな事をされれば人というものは寄りかかってしまうものです。
だって弱さを受け入れてくれたんだから。
メサイアコンプレックスはそこまで全て想定済みです。
自分も自信が無いため相手がどんな言葉を欲しているのかも大体見当がつくのです。
なのでメサイアコンプレックスは
”相手が一方的にこちら側に寄りかかってくる所“
まで大体全て想定済みで、大体掌の上で転がされてると思ってください。
さてそんなクソリプ以上にクソみてえな行動をするメサコンさんですが、そこから以上のことは手に負えません。
今の状況は、相手から一方的に“唯一の頼れる存在”として見られている、そんな感じ。
でもどうでしょう。メサコン氏の中にも、愛情というものは存在してはいないのです。
なので頼られたからと言って頼るわけじゃないし、あくまでギブアンドテイク精神、「私はこんなに与えたのに何であなたはくれないの?!」「もっと私のことも気にかけてよ!」
内々で沸々と怒りが湧いてくるんです。
そしてその怒りによりクロッキー帳一冊が散り、BL漫画一冊が破れ、携帯も壊れます。
そして、その子との関係が、死ぬのです。
もう想像、ついたかと思います。
ここまでにしておきます。
とっても優しくて出来る子だったのになぜか私なんかを好きになってしまって二年ほど充実出来なかった時間を作らせてしまった事、本当に後悔ばかりしています。
ごめんね。
今でも「あの時に戻れたら上手くやれるのに」と後悔する時がチラホラあります。
本当にごめんね。
多分、人生で一番、好きでした。
ちょっと盛ったかも。
ちなみに今はもう私がブロック削除したのでこの子とは疎遠だ。
今はメサコン落ち着きつつあるので、安心してね。